抗菌薬は役割によって大きく5つに分類できます。
- 細胞壁合成阻害薬
- 細胞膜機能阻害薬
- タンパク質合成阻害薬
- 核酸合成阻害薬
- 葉酸合成阻害薬
抗菌薬は細胞に効く薬といえども、細胞は多種多様です。それぞれ細胞ごとにルールや仕組みが異なります。

それぞれ個別に見ていきましょう。
細胞壁合成阻害薬
細胞壁合成阻害薬とは、細胞がそれぞれは持つ壁(細胞壁)を壊すことによって細菌を死滅させる抗菌薬です。
細菌の細胞には、細胞の周りを守るために細胞壁と呼ばれる壁があります。この壁があることで、細胞は形を保てているのです。
細胞壁合成阻害薬はその細胞壁に攻撃して、壁を壊します。この壁がなくなると細胞は溶けて消えてしまうのです。
【代表的な細胞壁合成阻害薬】
- ペニシリン系
- セファロスポリン系
- グリコペプチド系
細胞膜機能阻害薬
細胞膜機能阻害薬とは、細菌の細胞にある膜(細胞膜)の構造を変化させることで、細胞膜に機能障害を起こす抗菌薬です。

細胞膜は、活動に必要な栄養を取り込んだり、細菌の内部液の流出を防いだりと、細菌の生命維持に欠かせない存在です。
細胞膜機能阻害薬はその機能を狂わせる効果を持っています。細胞の生命維持に必要な物質を細胞外に流出させてしまうのです。
【代表的な細胞膜機能阻害薬】
- ポリペプチド系
- リポペプチド系
タンパク質合成阻害薬
タンパク質合成阻害薬とは、細菌のタンパク質を合成している器官(リボソーム)を攻撃する抗菌薬です。
リボソームを攻撃されると、細菌はタンパク質の合成をできずに死滅するのです。
リボソームはタンパク質を作る器官で、細胞膜の内側にあります。タンパク質は細菌にとって大切な存在です。
タンパク質は細菌そのものを作ったり、生命維持にかかわる役割を持っています。

タンパク質合成阻害薬により細菌はタンパク質を合成できなくなり、死滅します。
【代表的なタンパク質合成阻害薬】
- アミノグリコシド系
- テトラサイクリン系
- マクロライド系
核酸合成阻害薬
核酸合成阻害薬とは、細菌が増殖するのに必要な遺伝情報を引き出せないようにする抗菌薬です。
細胞が増殖するためには、細菌の核酸(DNAやRNAなどの遺伝情報)が必要です。
核酸の持つ遺伝情報は細菌にとっていわゆる増殖に必要な設計図と言えます。
細菌は増殖するためにその設計図を読み込まなければなりません。
核酸合成阻害薬は細菌がその設計図を読み込めないようにするのです。

【代表的な核酸合成阻害薬】
DNAに作用
- ニューキノロン系
- メトロニダゾール
RNAに作用
- リファンピシン
葉酸合成阻害薬
葉酸合成阻害薬とは、葉酸の合成を阻害することで細菌の増殖を抑え込む抗菌薬です。
葉酸は水溶性のビタミンB群の一種で、細菌が分裂するために欠かせない物質です。

葉酸合成阻害薬はその合成を防ぎます。
細胞が葉酸を作り出せないようにすることで、細菌の増殖を抑えるのです。
【代表的な葉酸合成阻害薬】
- ST合剤
- サルファ剤